日本カトリック司教協議会 会長談話
3月2日の灰の水曜日に、ウクライナにおける平和のために断食と祈りを捧げましょう
「平和を実現する人々は、幸いである、その人たちは神の子と呼ばれる」(マタイ福音5章9節)
ウクライナとロシアの国境を挟んで高まっていた緊張は、国際社会の度重なる平和と対話の呼びかけにもかかわらず、2月24日、ロシアによる軍事侵攻の開始という残念な結果となりました。多くのいのちが、今、危機に直面しています。
神からの賜物である、いのちを守ることは、神の子である、わたしたちの務めです。
ロシアの指導者には、いますぐ、武力によるウクライナへの侵略を止め、対話による平和の確立の道を歩まれることを求めます。
戦争は自然に発生するものではなく、人間が生み出すものです。第二次世界大戦前夜、ヨーロッパにおいて国家間の緊張が高まる中で、教皇ピオ12世は、「平和によってはなにも損なわれないが、戦争によってはすべてが失われうる」(教皇ピオ12世1939年8月24日のラジオメッセージ)と、世界に平和を呼びかけました。
戦後、東西対立が深まり核戦争の危機が現実となったときに、教皇ヨハネ23世は『地上の平和』を著し、ピオ12世のその言葉を思い起こしながら、「武力に頼るのではなく、理性の光によって――換言すれば、真理、正義、および実践的な連帯によって(ヨハネ23世「地上の平和」(62)」こそ、国家間の諸課題は解決されるべきであり、その解決を、いのちを危機に直面させ、さらには人間の尊厳を奪う、武力行使に委ねることはできないと主張しました。
今日、大国による他の独立国への軍事侵攻という事態を目の当たりにして、その決断がいのちをいま危機に陥れるだけでなく、将来の世界秩序に多大な負の影響を与えるであろうことを憂慮します。
わたしたちの「共通の家」が平穏に保たれ、真の神の秩序が確立されるように、政治の指導者たちが対話を持って解決の道を模索することを心から求めます。
教皇フランシスコは、先日の一般謁見で、「神は平和の神であり、戦争の神ではありません。神は皆の父であり、誰かのものではありません。わたしたちが必要とするのは兄弟であり、敵ではありません」と呼びかけ、さらに「暴力の悪魔的な無分別さに対して、神の武器、すなわち、祈りと断食をもって答えることをイエスは教えました」と述べて、今年の灰の水曜日(3月2日)を、平和のための特別な断食と祈りの日と定めました。
わたしたち教会は、3月2日の灰の水曜日に、ウクライナにおける平和のために断食を捧げ、祈ります。いのちの危機という恐怖の中にある多くの方と連帯し、平和の実現のために、ともに祈りをささげます。そして、政治の指導者たちの上に、いのちの与え主である神の導きがあるように、祈ります。
2022年2月28日
日本カトリック司教協議会会長
カトリック東京大司教 菊地 功